杉本達治氏は、自治省・総務省で地方行政に携わり、福井県総務部長、副知事を経て、選挙で福井県知事となった人物です。
地方財政や過疎対策、防災などの行政実務を歩いてきた官僚が、なぜ福井県に深く関わり、首長として2期の県政を担うことになったのか。学生時代から知事辞職までを、本人の言葉とともにたどります。
- 岐阜県で育ち、東京大学法学部から自治省へ入り、地方行政を中心に官僚として経験を重ねました。
- 福井県総務部長、副知事を務めた後に官僚を退き、知事選へ転じました。
- 2期の県政で交通、子育て、産業などに取り組みましたが、職員へのセクシュアルハラスメント問題を受けて任期途中で退任しました。
杉本達治の生い立ち|中津川で生まれ、多治見北高校から東京大学へ
杉本氏は1962年7月31日、岐阜県中津川市に生まれました。祖父は福井県大野市の旧大野郡西谷村の出身で、本人が福井県で働き始める以前から家系上の縁がありました。
高校は岐阜県立多治見北高等学校です。2022年には母校へ戻り、「スタートは多治見北高」と題して在校生に講演しました。
そこで東京大学法学部を選んだ理由を尋ねられた杉本氏は、自分なりに高い目標へ挑もうとした高校時代の考えを語っています。
「自分のポリシーで高い山に登りたかった」
出典:多治見北高同窓会「杉本福井県知事が在校生に講演」(2022年11月22日)
杉本達治の学歴|多治見北高校から東京大学法学部へ
| 区分 | 学校名 | 学部・専攻 | 現在の偏差値・難易度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 高校 | 岐阜県立多治見北高等学校 | ― | 66(2026年度版) | ― |
| 大学 | 東京大学 | 法学部 | 67.5(文科一類・2027年度参考) | 卒業 |
※偏差値・難易度は杉本氏の在学当時ではなく現在の目安です。多治見北高校は2026年度版、東京大学法学部は文科一類を参考値として掲載しています。
進学した東京大学では法学部で学び、1986年3月に卒業しました。卒業後の進路は民間企業ではなく、地方自治を所管していた自治省でした。
「世のため人のため仕事がしたい」
出典:毎日新聞(StartHome転載)「セクハラ認定の杉本・前福井県知事どんな人? 岐阜出身の元総務官僚」(2026年1月7日)
杉本達治の経歴|長野・徳島・山形を歩いた自治官僚時代
1986年4月に自治省へ入省すると、最初は地方財政局財政課に配属され、同年7月には長野県へ赴任しました。中央省庁だけでなく地方自治体の現場を行き来するキャリアが早い時期から始まっています。
1991年には徳島市財政部長兼理事、1993年には国土庁地方振興局の過疎対策室課長補佐を務めました。地方財政と過疎地域の課題の双方に関わった時期です。
その後は山形県へ移り、商工労働観光部の商業経営、文化環境部の文化振興、総務部の財政と、性格の異なる行政分野を担当しました。1999年には自治省へ戻り、固定資産税を扱う部署で勤務しています。
2000年には自治大臣秘書官となり、中央省庁再編後は総務大臣秘書官を務めました。2003年には総務省自治行政局行政課企画官となり、地方自治制度を扱う立場に移っています。
長野や山形で暮らした経験は、後に福井の地域文化を発信するときにも本人の比較材料になりました。2021年には、それぞれの土地でそばを食べてきた経験から福井の越前おろしそばへの思いを投稿しています。
福井県総務部長、副知事を経て知事選へ
福井県との行政上の接点が大きくなったのは2004年です。総務省から福井県へ赴任し、総務部長に就任しました。
2007年には内閣参事官として中央へ戻り、2010年から総務省自治税務局市町村税課長を務めます。そして2013年、今度は福井県副知事として県庁へ戻りました。
副知事を2016年まで務めた後は消防庁国民保護・防災部長、総務省公務員部長などを歴任。2018年11月に総務省を退官し、行政官としての道から選挙へ進みます。
2019年4月の福井県知事選で初当選し、長く行政組織の中から政策を担ってきた杉本氏は、自ら有権者の審判を受ける知事となりました。
就任直後に示したのは「県民主役の県政」と「徹底現場主義」です。職員に対しては、知事への追従ではなく意見を出し合う県庁を目指す考えを語っていました。
「耳の痛いことも含めてぜひ意見を聞かせていただいて」
出典:福井県「知事記者会見の概要(平成31年4月23日)」(2019年4月23日)
県民参加で2040年の福井を描いた1期目
知事就任後に着手した大きな仕事の一つが、2040年を展望する福井県長期ビジョンでした。策定には1年以上をかけ、5,000人を超える県民が議論に参加したと杉本氏は説明しています。
基本理念は「『安心のふくい』を未来につなぎ、もっと挑戦!もっとおもしろく!」。行政だけで計画を作るのではなく、市町、企業、団体、県民を巻き込む「チームふくい」という考えも県政運営の柱に据えました。
新型コロナウイルスへの対応が重なった1期目を経て、2023年4月の知事選では再選。2期目へ進みました。
県民参加型のイベントも広がります。北陸新幹線開業直後の2024年3月31日には第1回ふくい桜マラソンが開催され、杉本氏はランナー、沿道の応援、ボランティアが一体となった大会の様子を発信しました。
杉本県政で進めた政策と政治姿勢
北陸新幹線開業を「その先」へつなぐ
知事在任中の大きな節目が、2024年3月16日の北陸新幹線・金沢―敦賀間開業です。開業そのものをゴールにせず、駅周辺のまちづくり、観光誘客、県内周遊、企業投資につなげることを重視しました。
開業後は人流データも発信しています。4月11日の投稿では、福井・芦原温泉・敦賀の3駅周辺における県外客の動きや、ハピラインふくいなど二次交通の利用状況を具体的な数字で紹介しました。
「ふく育県」と人口減少への対応
人口減少への対応では、結婚、出産、子育てを切れ目なく支える「ふく育県」を展開しました。保育料負担の軽減、男性の育児休業、結婚支援、不妊治療支援など、子育て世代の生活環境を幅広く扱っています。
杉本氏が人口政策で意識していたのは、人口数そのものだけではありません。働き方や住環境を含む生活全体の価値を高め、県外からも選ばれる地域を目指していました。
「私は、『福井に住む』ことがトレンドになるような社会にしたいと思っています。」
出典:事業構想オンライン「福井県知事インタビュー 伝統を活かし、もっとおもしろい福井へ」(2021年5月号)
定住だけでなく、複数の地域と継続的につながる人を増やす考えにも関心を広げました。2025年には「ふるさと住民登録制度」をめぐり、二地域居住や関係人口を地域づくりに結び付ける考えを発信しています。
伝統産業を「価値づくり産業」へ
産業政策では、越前和紙、越前漆器、越前打刃物、越前焼、眼鏡、繊維など、長い歴史を持つ福井のものづくりを新しい市場へつなぐ「価値づくり」を掲げました。
工房や企業を一斉開放する「RENEW」などを、製造業だけで完結する取り組みではなく、作り手と来訪者が出会う場として捉えています。
「良いものを時代に合わせて形を変えながら磨きをかけていくことが大事です。」
出典:事業構想オンライン「福井県知事インタビュー 伝統を活かし、もっとおもしろい福井へ」(2021年5月号)
起業と若者のチャレンジを支える
既存産業だけでなく、新しい事業を生み出す仕組みづくりも進めました。県内企業、金融機関、大学などをつなぐ福井型のスタートアップ・エコシステムを掲げ、ピッチイベントや資金面の支援を組み合わせています。
若者の挑戦を経営者が支援する「チャレンジ応援エグゼクティブ」の仕組みでは、行政が直接すべてを支えるのではなく、地域の経営者を応援側に巻き込む形を取りました。
米や食を地域ブランドとして発信
農業・食分野では、県産米やそば、日本酒、水産物などを単なる農林水産物として扱うのではなく、福井を外へ伝える地域ブランドとして発信しました。
福井県のブランド米「いちほまれ」もその一つです。2024年の新米発表ではCM出演者らとともに情報を発信し、食を観光や県の認知向上につなげています。
地域医療を制度面から支える
医療では、県立病院など公立病院が救急、周産期、災害医療、へき地医療を担う一方、人件費や物価の上昇で経営が厳しくなる問題を取り上げました。
2025年5月には、診療報酬の改定や消費税負担を含め、地域医療を維持するための制度見直しを国へ求める姿勢を示しています。
原子力立地県として廃炉・エネルギー産業を考える
多くの原子力発電所を抱える福井県では、原子力政策も避けられない県政課題でした。杉本県政では安全確保や国への要請に加え、嶺南地域で原子力・エネルギー関連産業を育てる「嶺南Eコースト計画」を進めています。
2025年5月には福井県と敦賀市、小浜市、美浜町、関係企業などが原子力リサイクルビジネスの包括連携協定を結び、廃炉に伴って生じるクリアランス物の処理や地元企業の参入、人材育成を進める枠組みを整えました。
| 年月日 | 選挙 | 選挙区・地域 | 所属 | 結果 | 得票・順位 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019年 4月7日 | 福井県知事選挙 新人。自由民主党推薦。現職の西川一誠氏らを破り初当選。 | 福井県 | 無所属 | 当選 | 220,774票 1位 |
| 2023年 4月9日 | 福井県知事選挙 現職。自由民主党・立憲民主党・公明党の推薦を受け再選。 | 福井県 | 無所属 | 当選 | 282,097票 1位 |
杉本達治氏の記者会見をテーマ別に見る
記事本文で扱ったテーマを、本人の記者会見まで深掘りできます。まずは代表的な発言を表示し、関連発言があるテーマだけ追加で確認できます。
北陸新幹線と地域経済
「さらに堅調に、順調に来ている」
北陸新幹線の福井・敦賀開業後の利用状況を説明し、首都圏からの来訪増を地域経済や観光の活性化につなげる考えを示した。
人口減少と若者定着
「社会減は依然として継続をしていて」
県内大学への進学や若者の県内定着を重視し、新幹線開業を地域の魅力や将来への希望につなげながら人口流出を抑える考えを述べた。
国土強靱化と分散型国家
「分散型国家をどう作るのか」
首都直下地震などへの危機感を背景に、北陸新幹線、人口減少対策、国土強靱化、エネルギー政策を一体的な国家課題として進める必要性を述べた。
※ 内容の要点は公式一次情報をもとに整理しています。正確な文脈・全文は各リンク先の公式資料から確認できます。
2期目途中の辞職と特別調査委員の報告
2025年4月、福井県の公益通報外部窓口に、杉本氏から不適切なメッセージを受けたとする県職員から通報が寄せられました。県内での調査を経て、9月から3人の弁護士による特別調査が進められました。
杉本氏は同年11月25日の臨時記者会見で辞意を表明。12月3日に退職を申し出、翌4日に県議会が全会一致で同意しました。2025年12月4日に福井県知事を辞職し、2019年から続いた知事在任は2期目途中で終了しました。
2026年1月7日に公表された調査報告書は、詳しい聞き取りと客観資料の提供に協力した女性4人について調査し、杉本氏から送信されたセクシュアルハラスメントを裏付けるテキストメッセージを約1,000通確認したとしています。
報告書はさらに、3件の身体的接触に関する被害供述について「信用性が高い」と判断し、調査対象となった言動はいずれもセクシュアルハラスメントに当たると認定しました。
法的評価については、執拗なメッセージの一部にストーカー規制法へ抵触する可能性、身体的接触について不同意わいせつ罪へ抵触する可能性を否定できないとし、杉本氏の責任を「重大」と評価しています。
これらは特別調査委員による事実認定と法的評価です。刑事裁判による有罪認定とは異なり、2026年9月8日時点の公開情報から杉本氏の起訴や有罪確定は確認できません。
報告書公表後、杉本氏は書面で事実認定と評価を尊重すると表明し、当初「冗談」「軽口」と説明していた自らの対応も含めて謝罪しました。
「低俗かつ愚劣なものであり被害者の方々の尊厳を傷つけた」
出典:杉本たつじ公式サイト「『ハラスメント事案に関する特別調査委員 調査報告書』にかかるコメント」(2026年1月7日)
辞職後には退職手当の扱いも議論となり、杉本氏側と県との協議を経て、2026年5月までに1,500万円を県へ自主返納しました。県は法的な返納義務がない中で締結した合意に基づく対応と説明しています。
本人の講演で県政の考え方を見る
2024年5月には京都大学公共政策大学院で約1時間40分にわたって講演し、自身の行政経歴から県政運営、人口減少対策、働き方改革、産業政策までを本人の言葉で説明しました。
杉本達治氏の現在情報
2025年12月4日に福井県知事を辞職し、2026年9月8日時点で新たな公職就任や選挙立候補は確認できない。2026年1月に特別調査委員の報告書が公表され、同年5月までに退職手当のうち1,500万円を福井県へ自主返納した。
本文内の関連投稿に加えて、本人の公式Xから最新の投稿を表示しています。
@TatsujiS の公式Xを見る- 生年月日、東京大学法学部、自治省・総務省での職歴、福井県総務部長、副知事、知事就任を確認
- 多治見北高等学校の同窓生であること、母校講演、学生時代についての本人発言を確認
- 知事就任時の県政運営、県民主役、徹底現場主義、県庁組織に対する考えを確認
- 杉本氏の退職申出、2025年12月4日付辞職、県議会による同意を確認
- 調査経緯、事実認定、セクシュアルハラスメント認定、法的評価を確認
- 調査報告書公表後の本人の謝罪とコメントを確認
- 2026年9月8日時点で杉本氏が福井県知事の現職ではないことを確認
- 2019年福井県知事選挙の党派、得票数、初当選を確認
- 2023年福井県知事選挙の党派、得票数、再選を確認
- 福井県長期ビジョン、県民参加、人口減少、暮らし、伝統産業、価値づくり産業について確認
この記事の更新履歴
- 2026年10月2日 学歴後の最初の職歴・政界入りを経歴H2へ再配置し、後続の経歴項目を人物固有H3へ整理
- 2026年10月2日 経歴の続きと重複政策H2をH3へ整理し、高橋光男・岸本周平記事と同じ見出し階層へ統一
- 2026年10月2日 本文内の手動管理ショートコードと監査用の汎用H3を撤去し、WordPress側の自動表示と内容に即した見出し構造へ整理
- 2026年10月2日 本文内の公式X投稿が5件未満の記事について、既存の関連投稿を保持したまま本人公式Xの最新投稿で不足分を補完
- 2026年10月2日 主要見出しを「生い立ち・学歴・経歴」の3本柱へ整理し、既存本文を削除せず検索意図と読みやすさを統一
- 2026年10月2日 本文の重要な年月・当選・就任・退任などを赤文字で強調し、重要箇所の視認性を改善
- 2026年9月29日 本人公式Xを再確認。アカウントが非公開のため投稿埋め込みは行わず、見送り理由を品質管理に記録。
- 2026年9月28日 在任中の福井県公式知事記者会見を一次情報としてテーマ別に確認し、一次情報深掘りセクションを追加・更新。
- 2026年9月8日 記事を新規作成。現況情報を確認



















